海外起業の壁を乗り越え、オリジナルのジェルネイルを世界へ

2019.04.16旅行・留学
Summary あらすじ

各国のプロネイリストから愛されるジェルネイルブランドKOKOIST。その本格派ブランドを作り上げた柏木ココさんは、抜群の行動力と意志力で国際的なビジネスを展開しています。世界中に5,000人をこえる門下生を持つネイルブランドオーナーの海外起業の軌跡をご紹介します。

「プロのネイリストが納得できる最高品質のジェルネイルを作りたい」

 

海外ビジネスにおける多くの課題を乗り越え、試行錯誤を繰り返しながらプロフェッショナルに支持される本格的ネイルブランド「KOKOIST」を作り上げた柏木ココさん。今では商品の企画開発だけに留まらず、ネイリスト育成のための教育システムの提供など次々と新しい展開を繰り広げています。

 

その原動力は、プロのネイリストであり国際企業の経営者でもあるココさんの高いプロ意識でした。

 

Profile

柏木ココさん

ジェルネイルブランドKOKOISTのオーナーとして、ネイル商材の企画開発、ネイリストの育成などネイル関連事業を幅広く手がける。本社のある日本とアメリカをはじめ、中国、台湾などアジア各国のKOKOIST代理店を統括するなど、国の垣根を越えてボーダレスに活動。シドニーとハワイでの生活を経て、現在はアメリカ・テキサス州に在住。

海外で出会ったネイルに感激。シドニーでネイルスクールの門を叩く

 

KOKOISTを開発した理由と主な仕事内容を教えてください。

 

KOKOISTは、私がプロデュースするプロのネイリストのためのジェルネイルブランドです。私は長年ネイリストとして活動しながら、「もっと扱いやすい商品が欲しい」「もう少し長持ちする商品があれば……」といつも理想の商品について思いを巡らせていました。プロのネイリストが本当に求めている、かゆいところに手が届くような商品をずっと作りたかった。そんな思いから生まれたのがKOKOISTで、最高級の材料や妥協のない製造方法などネイリストとしての私のこだわりが凝縮されています。

 

私の主な役割はKOKOISTの商品開発と世界各国の代理店さまへのディレクション、プロのネイリストを目指す人やその指導者などにKOKOISTの教育システムを提供することです。KOKOISTの門下生は世界で約5,000人、そのうち認定指導者として活動している方は300人ほどいらっしゃいます。

 

世界各地でご活躍されていますが、ネイルにご興味を持たれたきっかけをお聞かせいただけますか?

 

もともと日本の証券会社で働いていましたが、24歳のときにオーストラリアに語学留学し、その後もシドニーの会社で働いて海外生活をしていました。そこで出会ったのがネイルです。シドニーの美容室で初めてネイルを体験したときのことは忘れられません。当時は日本にはまだネイルが浸透しておらず、初めて目にした美しい爪に「なにコレ!」とすごく感激したんです。

 

「絶対にネイルをマスターしたい!」とすぐにシドニーのネイルスクールに入学しました。学校卒業後しばらくは現地のネイルサロンで働いていましたが、本格的にビジネスがしたくなり自宅の一部をサロンにして開業することを決意。思えばもう25年も前のことですが、今でいうサロネーゼのようなスタートでした。

シドニーから憧れのハワイに移住するもサロン開設時にトラブル発生

 

シドニーの中心部のウィンヤード駅近くにはじめの店舗を構えられたとお聞きしています。

 

嬉しいことに私のネイルがご好評をいただいてお客さまがみるみる増えていったため、自宅の一角では手狭になってしまって。自宅サロン開始から1年足らずでシドニーの中心部にお店を出すことにしたのです。当時、美容室の一角にネイルコーナーを設けているお店はありましたが、日本人が街の真ん中にネイル専門店を出した例はなかったので、手続きや信用面をクリアするのが大変でしたね。家主も物件を貸しても大丈夫か不安だったことでしょう。若いうえに英語も片言だった日本人の私によく店舗を貸してくれたものだと思います。

 

自宅サロンでは現地在住の日本人のお客さまが多かったのですが、シドニー中心部のお店ではオージーのお客さまがぐんと増えました。スタッフもお客さまも順調に増えて店舗経営も軌道に乗ってきたのでそろそろ2店舗目を出店したいなと。いろいろ検討した結果、次の店舗はハワイに出すことにしたのです。

 

なぜ次の出店地にハワイを選ばれたのでしょうか?

 

どうせなら昔から大好きだったハワイに店を出したいなと(笑)。ウィンヤードのお店は当時のスタッフに任せて、あまり躊躇せずに家族でハワイに渡りました。

 

ただ、ハワイに行ってからが大変で……。というのも、物件探しを始めて早々に賃貸契約を結んだのですが、アメリカのネイル資格やサロンライセンスがなければお店を開けないことが判明したんです。しかも、当時はネイルの資格試験が年に2回しかなく、次の試験はもう間近に迫っていました。先に店舗を借りてしまっていたので、「この試験に落ちたら空家賃を半年も払うことになってしまう!」と試験までの数週間は目から血が出るほど勉強しましたね。プロとしての知識はすでにありましたが、英語で書かれた分厚いテキストには悪戦苦闘。主人に食事も口に運んでもらうほど勉強に集中し、なんとか無事に一度で合格できました。ネイル資格を取得した後、サロンライセンスも無事に取得して2000年にハワイ店をオープンできました。

 

ちなみに現在は、サロン経営ではなくKOKOISTの商品開発にビジネスが移行しています。オーストラリア、ハワイ、日本などあちらこちらに散らばっていた店舗に私の目が届かなくなったのがサロン経営を縮小することにした理由です。でも、自分のサロンで培った店舗経営のノウハウはネイルビジネスの礎になっています。

ネイル商品の開発でMade in Japanの実力を再認識

 

ジェルネイル商材の開発を始められたのはいつ頃からでしょうか?

 

KOKOISTの商品開発を始めたのは10年前ぐらいからですね。有名ブランドを手がけるニューヨークの工場にどうしても商品を製造してほしくて、ハワイからニューヨークに飛びました。はじめは工場側に全く相手にされず門前払い。ハワイからわけの分からない日本人が来たと思ったのでしょうね。粘り強く足を運んで交渉し、やっと商品を作ってもらえるようになりました。でも、自分の思うようなものがなかなかできず、ドラム缶にして何本分の高級資材を無駄にしたかわかりません。

 

そんなとき、一度、日本の工場に依頼してみようかと。そうしたら、驚くほどすんなりと自分の求める商品ができあがりました。日本の技術の素晴らしさに感動しましたね。それ以来、KOKOISTはプロのネイリストのこだわりを忠実に実現したクオリティの高いMade in Japanの商品として世界各地で高い評価をいただいています。

 

今はテキサス州にお住まいだそうですが、ハワイから拠点を移された理由は何でしょうか?

 

ハワイは本当に大好きなので離れがたかったのですが、商品をアメリカ国内や海外に流通させるには本土の方がずっと効率が良かったのです。それに、プロを目指してゴルフに真剣に取り組んでいる息子にとってもテキサスは良い環境でした。

 

けれど、今も東京やアメリカ、中国をはじめとするアジア各地などを転々としていて、テキサスの自宅には年に半分もいません。そういった意味では世界各地のどこを拠点にしても良いのかもしれません。息子が成人する数年後、そして5年後、10年後、私たち夫婦はどこに暮らしているのか見当もつきませんが、必要があれば世界中のどこにでも移動する心構えはあります。

海外生活で大切なのは適応能力。自分のアイデンティティを見失わずに

 

いろいろな国でビジネスを展開されていますが、海外で起業を成功させる秘訣はありますか?

 

一見順調そうに見えるビジネスも一本調子でうまくいった例は少ないのではないでしょうか。私もお店を何軒もクローズしたり、高価な商材を無駄にしたり、お金も時間も失った厳しい経験が何度もあります。私の場合は常に自分の思いが目の前にあったので、トラブルに見舞われながらも目標に向かって突っ走りました。恐れずにチャレンジしなければ何も始まりませんが、うまくいくこともあれば失敗することもあるということは心に留めておかなくてはなりません。

 

あとは英語ですが、実をいうと今でも英語にはあまり自信がないんですよ。「もっと昔にどうしてきちんと勉強していなかったのだろう」と思うぐらい。商品説明や一般的なコミュニケーション、ネイルの技術の説明などは英語でできますが、ビジネスの場に必要な契約書レベルの高度なやり取りになるとやはり今でも難しいです。アメリカで生まれ育ったネイティブの息子に言わせると、「ママの英語は恥ずかしい!でも、とってもチャーミング」なんですって(笑)。私が日本なまりの英語であれこれと話をするのを現地の取引先の方たちも面白がってくれているみたいです。

 

オーストラリア、ハワイ、アメリカ本土と各地で快適に暮らすための心得を教えてください。

 

もう海外生活は随分と長くなりましたが、外国と一口で言っても国によって文化も習慣も教育も異なりますから、ぞれぞれの考え方にも大きな隔たりがありますよね。長く暮らせば暮らすほど現地の方と自分自身との違いも明確に感じるようになります。でも、私はそれで良いと思うのです。例えば、アメリカに暮らすからといってアメリカ人になる必要はない。自分の日本人としてのアイデンティティを無理に曲げなくても、相手の考え方や文化を尊重しながら自分らしく暮らせば良いのだと考えています。

 

大切なのはどんな環境でも自分を見失わないことと適応能力です。自分を受け入れてくれている海外の人たちに感謝しながら自分らしく生活していくことが快適に海外生活を送る私なりのコツなのかもしれません。

ココさんの軌跡には国を問わずに活躍するための秘訣がいっぱい

 

昨年、日本に自社工場を設立し、さらにビジネスが拡大しそうなKOKOIST。今後は他社商品もプロデュースし、ネイル商材を世界各地に供給するメーカーを目指しているそうです。

 

躊躇なく自分の思いを実行する行動力とスピード感、異なる文化や環境を受け入れる柔軟な適応力、そして予測不能なトラブルにも動じないプロ意識。ココさんの軌跡には国を問わずに活躍するための秘訣がたくさん詰まっています。

 

自分の夢や目標が何であれ、トライ&エラーを繰り返してこそたどり着けるものです。ココさんの前向きな姿勢が国籍や文化の違いを越えて支持されているのでしょう。

 

筆者:林カオリ/ライター・エディター

関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外の実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。

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