研修の効果測定について

企業の競争力において、人材の優劣が大きく影響することは疑う余地はありません。
近年、国内企業の多くが、少子高齢化や経済のグローバル化など様々な環境変化に直面し、人材の確保・育成が経営の大きな問題となってきています。そこで、今回は、人材育成に着目し、特に研修担当者の悩みの声が大きい、「研修効果測定」に注目してお伝えします。
研修効果とは?

まず、研修とは、「職務上必要とされる知識や技能を高めるために、ある期間特別に勉強や実習をすること。また、そのために行われる講習(参考:goo辞書)」であり、仕事の現場とは別に社内外で実施される教育です。一般的には、人事部や部門研修担当者が、社内ニーズや期間・予算などに応じて企画立案し、階層や職種毎に様々なプログラムを実施しています。
研修に対する効果とは、その教育を受けることにより、社員個人が職場におけるパフォーマンスが高められ、業績に貢献できた(できそうな状態になった)度合いと言えます。重要なのは、教育を受けた社員が職務にどれだけ活かせるようになったか(なりそうか)?ということです。また、教育を受けた社員が自己成長を実感し、仕事や更なる成長に向け意欲が沸くことも研修効果の一つと考えます。
研修効果測定における担当者の悩み

研修担当者の多くは、効果測定の重要性は理解しつつも、運営する上で悩まれることも多いのではないでしょうか?
よく聞かれる声として、以下のようなものがあります
- 効果測定の方法がよくわからない(正しい方法をよく知らない)
- 研修毎に異なる測定方法で運営せざるを得ず、労力と時間がかかる
- どのような指標を用いるのが妥当かわからない
- 評価の均質化が難しい(人が評価する場合、ばらつきがある)
- 研修委託業者が変わると測定方法や内容が変わることもあり、比較分析が出来難い
- 研修後に追跡調査などする場合には、部門の協力が得にくい
- 受講者が真剣に取り組んでくれない場合がある
- 経営者からテストの数値だけで評価される
研修効果の測定方法

研修担当者の悩みでも多く聞かれる「効果測定の方法がよくわからない(正しい方法をよく知らない)」という声に対し、今回は研修効果の測定方法として広く知られた「カークパトリックの4段階評価法」を紹介します。カークパトリックはアメリカの経済学者で、研修効果を反応‘(レベル1)、学習(レベル2)、行動(レベル3)、結果(レベル4)の4段階で評価し、効果を測るモデルを提唱しました。これにより、実施した研修が組織にどのように貢献できているかを「見える化」しようとしたものです。
段階 | 測定対象 | 測定方法(例) |
---|---|---|
レベル1:反応(Reaction) | 受講者の満足度、研修直後の知識習得度、研修講師の評価 | 満足度アンケート、講師フィードバックなど |
レベル2:学習(Learning) | 学習到達度の評価 | 理解度テスト、ロープレ、レポート提出 |
レベル3:行動(Behavior) | 職場における受講者の行動変容の測定 | 受講者や上司評価(研修数か月後のインタビューなど) |
レベル4:成果(Results) | 受講者の行動変容によって業績がどう変化したかの測定 | 職場の業績度合い |
また、カークパトリックの4段階測定モデルにもう1つのレベルとしてレベル5費用対効果(ROI)を加えたジャック・フィリップスの5段階測定モデルもあります(参照:PHP人材開発)。
研修効果測定の難しさ

実際には、研修担当者の立場からすると、上記のモデルは非常に参考になるものの、「各研修において、どこまでやるべきなのか?」と疑問を抱くのではないでしょうか?
立教大学経営学部の中原教授は、「企業内研修の実務において『厳密な研修効果の測定』は、限りなく「不可能」である。(中略)研修を「やりっぱなし」にしないでおく、というのは大切です。また、何もしなくてもいい、というわけではありません。教育の改善のため、研修効果を高めるため、なんらかの評価は行われるべきです。ただそこには「経済合理性」を超えた「厳密性」を求めるのは夢想だ」と述べています(参照:企業研修の実務では「厳密な研修効果測定」は不可能である!?・・・ていうか「やめたほうが」いい理由!? | 立教大学 経営学部 中原淳研究室 – 大人の学びを科学する | NAKAHARA-LAB.net)。
一般的な英語研修においては、上記モデルのレベル1とレベル2は多くの企業で実施していると聞きます。受講者の満足度アンケートは研修後に実施するケースが多く、また、英会話研修の前後にアセスメントを活用するケースも多いです。ただし、英語研修の場合、短期的に成果が出にくいことや業績への貢献度を数値で測ることは難しく、どのように成果を評価すればよいのか、また、経営者や受講者自身にどのように理解し、納得してもらうかで悩まれている担当者は多いと思います。
ちなみに、一般的な英語研修において、レベル3やレベル4まで「厳密」に実施している企業をほとんど聞いたことはありません。できることに越したことはないですが、実際にはできないと答える担当者がほとんどではないでしょうか?
研修の効果測定を活かすには?

自社の競争力を高める基盤づくりとして、社員が職務上必要とする能力をどれくらい有しているのかを把握し、育成し、適正に人員配置をすることは、経営管理上とても重要です。
人材の争奪戦が激しさを増し、コストも上昇する傾向において、人材育成の役割は益々重要となってきます。だからこそ、教育を改善し、研修効果を高めていくことが重要なのです。
では、英語研修の効果測定において、押さえておきたいポイントや注意点について、述べていきます。
1)研修と効果測定の目的を明確にする
当たり前の話ですが、何の目的で研修をし、何のためにどのような効果測定をするのでしょうか?研修目的が不明確だと何のために参加しているのか受講者に理解されず、学習意欲もわかないため効果は期待できません。また、何をどのように評価したいのかが不明確だと、研修に不適合な評価方法や手段を選択してしまう可能性もあり、効果測定そのものが有効にならないため、注意が必要です。
2)実現可能で現実的な目標を設定する
研修は、予算や期間など様々な制限の中で、多様な社員が参加し、実施されます。そのため、研修効果とその限界を認識し、より現実的で確実な成果を出すよう努めるのがベターと考えます。
そのためには、研修前に参加者の現状レベルを把握し、研修を通して実現可能で現実的な目標を設定・共有することが重要です。高すぎる目標や低すぎる目標は、社員の学習意欲を低下させる原因となります。実現可能でより現実的な目標を社員に認識させることは、学習意欲を持たせる上で重要です。また、適度な目標は達成したときの満足度も高くなるため、より研修の効果を高められます。
3)研修目的・内容と整合性のある評価方法・指標を用いる
例えば、ビジネス実践英会話研修を実施したのに、実施するアセスメントがアカデミックな内容、かつ、〇×の正誤問題が10問程度だとしたら、正しい評価が出来るでしょうか?
研修目的・内容と整合性のある評価方法・指標を用いないと正しく英語能力を評価することができません。このような場合には、Listening /Speakingを含んだビジネスシーンの問題が出題され、ネイティブレベルから初級レベルまで測定可能なテストのほか、研修内容に沿った内容のロールプレイングで習得度を段階評価する方式などが、より適していると言えるでしょう。
4)測定結果を分析し、改善案を検討したうえで、次回の研修に反映する
ポイントは、英語研修の効果をアセスメントのスコアのみで、評価しないことです。
研修の効果を測定する上で、重要な指標ではあるものの、あくまでも一部分の評価にすぎないからです。
研修効果を高めるには、研修参加者が学習の必要性を理解し、業務との関連性を認識できていること。また、学習内容を職場で実践する意志があることなどが要因にあるといわれています(参照:日本労務学会誌2016小薗・大内)。
ただし、アセスメントの結果とこれらの要因の関連性を毎回分析することは専門知識や労力面からして難しいです。そのため、例えば、有意性のある(確実にスコアアップした)特定集団と効果が見られなかった特定集団をデータで抽出する。次に、予め用意しておいた上記要因に関連する質問項目を、数名の該当者(可能であれば該当者の上長も)にインタビュー形式で答えてもらう方法で、英語能力の推移と要因分析がある程度可能です。
このような方法を継続していくことで、より効果を高めるための研修改善案が検討できると考えます。
ぜひ参考にしてください。
日米英語学院の英語研修のご案内

日米英語学院では企業・団体で英語研修をお考えの方に、達成目標に合わせた効果的な研修プランのご提案が可能です。効果測定としては受講者アンケート、講師によるフィードバックや研修前後のレベルチェックなどを実施しています。
例えば、海外取引先やパートナー企業との会議やプレゼンのスキル向上を目的としたビジネス英会話研修を実施する場合、まずは受講生の現在のレベルを把握(現在のレベルが分からない場合はレベルチェックをさせて頂きます)し、目標設定や教材の選定を行います。研修後には受講生アンケートや講師フィードバックを報告いたします。事前のご相談により、必要に応じて学習到達度をはかる理解度テスト・プレゼン大会などの実施も可能です。
効果をより分かりやすく図るため、研修の目的を細かく設定して研修を実施することもおすすめです。例えば、初級者を対象に、まずは会議が聞けるようになるためにリスニングに特化した3ヶ月研修、英文メールを読んで最低限伝えたいことを書くことができるようにする短期研修などです。これらを繰り返して積み上げていくことで、できるスキルが着実に増えていき、効果を実感できます。
より、自社のニーズに合わせて研修を行うためにも、まずはカスタマイズ英語研修の実績がある日米英語学院にご相談ください。
スコアとなる効果測定も必要である場合は、TOEIC(R) IPテストやTOEFL ITP(R)テストの実施、英検(R)準試験会場(日米英語学院スクール)での受験も可能です。
また、御社のニーズに沿った英語研修のご提案はもちろん、社員のモチベーションアップや学習支援のための「企業優待制度」もご用意しています。
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