言葉や文化の違いを乗り越えて。人気料理講師に聞いた「異国で自分らしく生きる術」

2018.09.18旅行・留学
Summary あらすじ

約7年前にニューヨークから日本に移住したMayumiさんは、絶大な人気を誇る南イタリア料理の講師。しかし、渡日当時はハーフならではの言葉の悩みや、文化的な違いに戸惑ったそうです。多々の葛藤を乗り越えて自分らしく生活するためのコツとは?また、言葉や文化の壁を取り払うための心の持ちようとは?

降り注ぐ太陽と美しい海。自然に恵まれた南イタリアの豊かな食材を使用した料理は、見た目も味も抜群とあって日本でも大人気のジャンル。そんな南イタリア料理の教室を主催しているのが、日・伊・英の3か国語を操るハーフのMayumiさん。生徒数は700名超を誇る、人気の料理講師です。

 

今回は、移住国で特技を生かしながら生き生きと暮らすMayumiさんに、海外コミュニティに溶け込んで現地生活を楽しむ秘訣をうかがいました。

 

Profile

Mayumi Uchinokuraさん

兵庫県西宮市苦楽園にてイタリア料理教室とお惣菜カフェを兼ねたサロン“Casa Mia”を主催。南イタリアの家庭料理が楽しめる気軽なサロンとして、また、国際派コミュニティの憩いの場として、地元の人々に愛されている。外国人料理講師を探せる大手サイトtadakuで人気が爆発。現在700名を超える登録生徒を抱える。イタリア生まれ、ニューヨーク育ち。日本人の父、イタリア人の母を持ち、日・英・伊の3か国語を話すトライリンガル。現在は、日本人の夫、小学生の娘とともに兵庫県に在住。

妊娠をきっかけに、ニューヨークから父と夫の故郷・日本へ移住

 

現在、人気のイタリア料理教室を開いておられますが、日本に来られたきっかけを教えてください。

 

 私の父は日本人ですが、私はイタリアで生まれてアメリカで育ち、日本で暮らしたことはありませんでした。でも、子どもを妊娠したとき、当時暮らしていたニューヨークは子育てに適した環境ではないと直感的に思ったのです。

 

夫も日本人で、ニューヨークでグラフィックデザイナーをしていました。イタリアに暮らすか、日本に暮らすか悩みましたが、夫の仕事の面を考えて日本で子育てをしようと決めて。夫の出身地の兵庫県西宮市は、街にも近いのに緑や自然が多いエリア。ゆったりとした住環境が子育てには理想的でした。

 

ニューヨークでも料理を教えておられたのですか?

 

ニューヨークではグランドセントラルステーション近くにあるエステティックサロンのマネージャーをしていました。弁護士や証券会社で働く男性が息抜きやリフレッシュのために来られるサロンで、一緒に働く同僚も上昇志向の人が多かったですね。また、アメリカの人気TVドラマの“Sex and City”のスタイリストを務めるパトリシア・フィールドさんのお店でファッション関係の仕事もしていました。野心に燃えるニューヨーカーの中で自分のポジションを保ち続けるのは、やりがいがある反面、ストレスも大きかったです。

 

アメリカでは料理を教えていませんでしたが、私の母が自宅で料理教室を開いていた影響か、昔から料理は大好きでした。母も私もイタリア料理を作りますが、ルーツは祖母です。南イタリア地方のモリーゼ州、カンパーニア州、プーリア州などは海と山に囲まれたエリアで、豊富な食材に恵まれています。特に私の祖母が暮らすバーリは、南イタリアでも料理のおいしさで知られます。「バーリのおばあちゃん」といえば料理上手というイメージなんですよ。

“Casa Mia”はイタリア語で“私の家”。文化をつなぐコミュニティのハブへ

 

現在は生徒数が700名を超える大人気の料理講師とお聞きしています。

 

料理教室を始めて5年ほどになりますが、本格的にレッスンを開始したのは2年前からです。外国人の家で外国の料理を学ぶことをコンセプトにした“tadaku”という料理教室サイトがあるのですが、その代表の方から「関西でビジネスを拡大したいので、講師として登録しませんか」と声をかけてもらいました。それから生徒数はみるみる増え、登録いただいている生徒数は700名を超えます。片道数時間かかるような遠方からの生徒さんもいるんですよ。人数が増えるにつれ、料理教室を自宅で行うことが難しくなり、2018年の3月にCasa Miaというお店をオープンしました。

 

緑と光があふれた素敵なお店ですね。お惣菜の販売やカフェも併設しているようですが。

 

ここで料理のレッスンを行っているのは、週に34日ほどです。その他に、イタリアのお総菜のテイクアウトやイートインも行っています。カフェスペースで総菜と一緒にコーヒーやワインを楽しむ人も多いですよ。

 

「カフェなの?お惣菜店なの?」と聞かれることが多いですが、店名の“Casa Mia”とはイタリア語で“私の家”という意味。知り合いの家に遊びに行くように気軽に訪問できる場所でありたいと思っています。西宮市苦楽園の文化交流・生活交流の場として、もっと認知度を上げていきたいですね。

人とコミュニティを愛する心が、自分らしさを発揮できる海外生活につながる

 

日本で生活するうえで言葉や文化の問題はありませんでしたか?

 

父が日本人で母がイタリア人、育ちがニューヨークとロサンゼルスだったので、ある程度は3か国語が自然に身につきました。父と話すときは日本語、母と話すときはイタリア語、友だちと話すときは英語といった感じで。

 

でも、実際に日本に来てからは、敬語がうまく使えずに困りましたね。日本語が拙い外国人なら不躾な日本語でも目をつぶってもらえるようですが、私は一般的な日本語を話すことができたため、敬語を使えないことで「失礼な人」と思われてしまって……。

 

また、文化や習慣の違いで苦しんだこともありました。日本人はあまり面と向かって「イヤ」とは言いませんよね。人付き合いの言外の感覚がわからずに、ある日突然、友人と距離ができてしまい、「嫌だったらそう言ってほしかった」と悩んだこともありました。アメリカでは友だち同士でも「好き」「嫌い」をはっきりと伝え、そこからだんだんと相手のことを知っていきます。もし、海外で生活したり、外国人とお付き合いしたりすることがあれば、嫌なことがあればはっきり嫌と言ってあげてください(笑)。その方が後の人間関係がスムーズに進むと思います。

 

「察する」「空気を読む」という付き合い方は日本独特なのかもしれませんね。そんな習慣や文化の違う日本で、どうして料理教室を始められたのですか?

 

日本に来たのは妊娠5か月の頃で、そのときは夫の親族以外に知り合いがおらず、寂しくてホームシックになったりもしました。そんな状況をどうにかしようと、夫の同級生や近所の知り合いを招いてホームパーティを積極的に開きまして。パーティで振る舞う私の料理のレシピが知りたいと、たくさんの方からご要望をいただき、料理のレッスンを行ったのが最初です。それから、知り合いや口コミでだんだんと生徒さんが増えていきました。

 

自分の文化や特技を生かして活躍しておられますね。異国で自分らしさを失わずに楽しく暮らすコツなど、海外生活を控えた方に向けたアドバイスがあればお願いします。

 

異文化を拒否せず、人に優しく、素直に接することが一番だと思います。それから、今、自分のいるコミュニティを愛することですね。知り合いがいないからと、家に閉じこもってばかりいても何も起こりません。誘われたパーティにはなるべく参加するなど、とにかく外に出ましょう。同じグループばかりで固まるのももったいないですね。

 

自分の人間関係を積極的に広げることで、コミュニティにも溶け込めるようになり、やがて信頼できるかけがえのない人たちに出会うことができるものです。英語がうまく話せなくても引きこもらずに、積極的に現地の人に話しかけてコミュニケーションをとってください。素晴らしい友人に囲まれながら、自分らしさが発揮できる環境がきっといつか整うはずですよ。

自分の心を開くと必ず世界は広がる。Mayumiさん流の異文化交流術をお手本に

 

インタビューの間、始終笑顔で流ちょうな日本語を巧みに操っていたMayumiさん。明るく広々としたキッチン、多種のイタリアワインが揃うバーカウンター、日当たりの良いカフェ空間、お洒落なイタリアグロッサリーなど、サロン内にはMayumiさんの愛するもの、大切なものが、ぎゅうぎゅうに詰まっていました。

 

小学生の母として、妻として、そして人気料理講師として、日々精力的に動き回るMayumiさんは、海外生活や外国語の学習に疲れた人に前向きなパワーを与える存在です。異文化コミュニケーションのお手本に、一度サロンを訪れてみてはいかがでしょうか?

 

【取材協力】

Casa Mia
http://casamiakurakuendeli.com/

 

筆者:林カオリ/ライター・エディター

関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外の実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。

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