世界の食文化シリーズ「アフリカやヨーロッパの食文化が交わったアメリカ南部の料理」

アフリカやヨーロッパの食文化が交わったアメリカ南部の料理。セロリ、玉ネギ、ピーマンの“三種の野菜”を炒めたものがベースで、複数のハーブ、スパイス、そして唐辛子などが加えられた独特の味付けが特徴。タバスコやバーベキュー発祥の地でもあるアメリカ南部の料理をご案内します。
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Introduction
「世界の食文化シリーズ」と題して、世界各国の食文化をご紹介する本企画。今回は「アメリカ南部の料理」をご紹介します。
アメリカ南部独特の食文化が形成されていった背景

アメリカ料理と聞いて、どんな料理を思い浮かべるでしょうか?ハンバーガーやフライドチキン、アメリカンピザやステーキなどを挙げる人が多いかもしれません。しかし実は、アメリカ料理と一口に言っても、その実態は地域によってさまざま。
アメリカ南部の料理は、奴隷貿易でアメリカに連れて来られた黒人たちの食文化の影響を色濃く受けています。オクラや豆類など、いくつかのアフリカ原産の食物が持ち込まれ、アフリカの食文化と類似性を持つ米や豆類を用いる料理が普及しました。
そして、一般家庭内で長らく黒人の使用人が白人家庭の厨房で料理を担当したことにより、アフリカの食文化とヨーロッパから入植した白人たちの食文化が混ざり合い、「クレオール料理」や「ケイジャン料理」といった南部独特の食文化が形成されていったのです。
フランス料理やスペイン料理の影響を受けている「クレオール料理」は、植民地時代の支配階級に親しまれ、都会的で洗練された味。一方、カナダ東部のアケーディア地方からミシシッピを下ってきたフランス系移民アケーディアン(Acadian)から転じてケイジャン(Cajun)と呼ばれるようになった人々たちの「ケイジャン料理」は、唐辛子を多く使い野性味のある素朴な味わいといわれています。
とはいえ、昨年ニューオリンズを訪れてレストランを回りましたが、今日ではこのふたつの料理はあまり明確に区別されていないように感じました。クレオール料理は「上品な南部料理」で、ケイジャン料理は「庶民的な南部料理」というニュアンスが少しは残っているものの、両方をミックスして「ニューオリンズ料理」や「ルイジアナ料理」とも呼ばれています。
セロリ、玉ネギ、ピーマンの“三種の野菜”を炒めたものがベース

アメリカ南部の料理「クレオール料理」と「ケイジャン料理」に共通しているのは、セロリ、玉ネギ、ピーマンの“三種の野菜”を炒めたものがベースとなっていること。そこに複数のハーブ、スパイスや唐辛子が加えられた刺激的な味付けが特徴です。
オクラをフライにしたり、「ガンボ」と呼ばれるスープにしたりするのも人気です。ちなみに、この「オクラ」は日本語ではなく、ガーナで話されるトウィ語の「nkrama」から英語では「okra」となり、日本でも「オクラ」と呼ばれるようになりました。
海に近いことから魚介類も豊富に使用しますが、ザリガニ料理や海老の料理は私のお気に入りです。海老をクレオール風のハーブやスパイスなどで煮込む「シュリンプクレオール」は、簡単に作れますので、ぜひチャレンジを。
玉ネギ、セロリ、ピーマンをバターでじっくり炒め、そこにトマトペースト、ニンニク、塩、黒胡椒、タイム、ベイリーフ、オレガノ、パセリなどのハーブ類、カイエンペッパー(唐辛子)などと海老を足して煮込むだけ。付け合わせに炊いたお米を添えれば出来上がり。タバスコをかけるのもおすすめです。このタバスコも、発祥の地はニューオリンズです。
アメリカ南部にはバーベキュー発祥の地も!

また、同じアメリカ南部、テネシー州メンフィスあたりはバーベキュー発祥の地です。
アメリカ南部のバーベキューは豚肉を使用することが多いですが、中でもプルドポーク(Pulled Pork)は日本でも流行りつつあります。プルドポークとは、アメリカ南部スタイルのバーベキューの代表的なメニューのひとつで、豚の腕肉や肩肉の塊を低温のバーベキュースモーカーでゆっくり5時間以上かけて調理し、それをほぐしたもの。これにオリジナルのバーベキューソースをかければ絶品!「アメリカ料理はまずい」なんて誰が言えるでしょうか。
今年の夏休みは、ぜひアメリカの食文化を探検してみてはいかがでしょうか?
筆者:岡本きよみ/PRディレクター
食、旅、ウェルネス、美容、カルチャーなどのPR・プロモーション活動、国内外における取材・プレスツアーのコーディネーションを手がけるとともに、企業や自治体向けのレシピ開発など、国内外の旬の食材、郷土食や伝統食など食文化をテーマに活動。日本旅行作家協会会員。
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