夢は何歳からでも叶えられる。専業主婦からグランドスラムも任されるテニスの線審へ
3人の子育てを終えた40代から線審として新しいキャリアに挑戦した長谷川さん。オーストラリアの主要テニス大会で一流プレーヤーの線審を務めつつ、大学生の子どもや夫との家庭生活も楽しんでいます。国際的な環境に飛び込むための秘訣やあきらめずに自分自身の可能性に挑戦する大切さなど、人生を充実させるヒントがいっぱいです。
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目次
Introduction
錦織圭選手や大坂なおみ選手など、日本人テニスプレーヤーの目覚ましい活躍が世間を賑わせています。そんな一流選手の試合を支えるのがテニスの審判。長谷川真里さんはテニスのラインアウトをジャッジする線審として、オーストラリアで活躍しています。
長い子育て期間のブランクを飛び越え、グランドスラム大会の決勝を任されるほどの実力を身に付けた長谷川さんにお話をうかがいました。
【Profile】
長谷川真里さん(Mari Hasegawa)
1993年にワーキングホリデービザで渡豪した後、旅行会社勤務などを経て現地に移住。子育てが一段落した2014年よりテニスのラインマン(線審)として活動を始める。現在は、世界の四大テニス大会のひとつである全豪オープンなどで、ロジャー・フェデラー選手をはじめ世界の一流プレーヤーの線審を担当。主婦と仕事を両立する自分らしいライフスタイルで世界を目指す実力派のママ線審。
ジュニア大会の線審からスタートし、グランドスラムの大舞台を担当
― オーストラリアで線審として活躍されていますが、今回、渡日された理由をお聞かせください。
2014年よりテニス・オーストラリアに所属し、オーストラリア国内の公式戦の線審をしていますが、今回は10月に行われた楽天ジャパンオープンテニスの線審をするために日本に帰国しました。楽天オープンは、ATP(男子プロテニス協会)の獲得ポイントが高い日本最大のテニス大会です。母国で行われる大会に線審として参加できたのはとてもラッキー。
オーストラリア以外で線審をしたのはこれが初めてだったので、とても勉強になりました。
― オーストラリアではどういった試合の線審をしておられるのですか?
最も大きな試合はグランドスラムの全豪オープンです。他にも全豪オープンと同じ1月に開催される地元のシドニー・インターナショナル大会や、パースやメルボルン、ブリスベンなどオーストラリア各地の主要なツアーにも参加しています。今でこそロジャー・フェデラーさんやラファエル・ナダルさん、そして日本の錦織圭さんなど、世界の名だたる一流選手の線審をさせてもらっていますが、線審になったばかりの頃はジュニアの公式試合をよく担当していました。今でもたまにジュニアの試合に顔を出しています。
キャリアを模索した専業主婦時代。趣味を生かした現職に巡り合う
― 線審になられたきっかけは何だったのでしょう?
テニスはプレイするのも観戦するのも好きだったので、2014年の1月にシドニー・インターナショナル・テニス大会のボランティアに申し込んだのです。私の役目は選手と審判を送迎車まで案内することでした。
そのとき、私が担当した人の中に世界で活躍されている日本人審判がおられて。「凄いですね!」としきりに感心していると、その審判の方が「やってみたら?」と。移動途中の軽い会話だったのですが、それを聞いたら急に興味が湧きまして(笑)。オーストラリアで線審になるための情報を必死に家でネット検索して、気が付けば翌月には線審講習に参加していました。その後、無事にテニス・オーストラリアの線審として登録が認められ、大小の試合で経験を積みながら現在に至っています。
― 線審になる前はどのようにオーストラリアで過ごしていたのですか?
私は1993年にワーキングホリデービザで渡豪し、シドニーで夫と知り合って結婚しました。それからしばらくは息子1人と娘2人の子育てにてんてこ舞い。専業主婦として子育てに悪戦苦闘しながらも、いずれは何か自分のための生きがいや仕事を見つけたいと考えていました。
子どもたちが高校生になると随分と手が離れたため、その思いが強くなって。治療や癒しのためのリメディアル・マッサージの学校に通ったこともありました。しかし、思った以上に腕や手を酷使する仕事だったため、テニスで痛めた肘が悪化してしまい断念せざるを得ませんでした。そんな中、大好きなテニスに関連する線審という仕事に出会うことができました。
趣味を上手に活用すれば、コミュニケーションの機会に恵まれ世界が大きく広がる
― オーストラリアではどのような方が線審をしているのですか?
他に仕事を持ちながら線審をしている人が多いですね。私の場合は主婦をしながら線審をしているわけですが、医療や法曹、教育関係など、責任のある職業と線審を両立している人も少なくありません。年齢も16歳から退職後の年配の方までさまざまです。
普段は知り合う機会がないような方々と仲良くなれたのは、線審という仕事のおかげ。「テニス好き」という共通点と線審として同じ目標をもつことで、年齢や立場、人種や国籍などのバックグラウンドに関係なく、みんな旧友のように打ち解けられるのです。素晴らしい仲間たちに出会えたことと自分の世界が広がったことは、線審になって本当に良かったと思える点です。
― 主婦業と線審をどのように両立されているのですか?
海外や地方の試合になると何日も家を空けなくてはならないような日が続きます。線審として活動できるのは家族の理解と協力があってこそ。夫や子どもたちに感謝しています。子どもはもう大学生ですから、私のいない間は夫と協力して家事を分担しているようです。
「全豪オープンの線審をする」といえば、初めは家族全員で盛り上がってくれたのですが、最近は「えー。また自分でご飯作らなきゃいけないの?」と少し面倒そうなときも(笑)。主婦業との掛け持ちで大変なときもありますが、家族と過ごす時間と大好きな線審の仕事、これからもどちらも大切にしたいですね。
―― 長谷川さんは40代になってから海外で新しいキャリアを手に入れました。これから海外で活躍したい方や、新しい可能性に挑戦される方にアドバイスをお願いいたします。
まずは自分の可能性をあきらめないことです。私はシャイな性格で、あんなに大勢の人の前で「アウト」「フォルト」と大声でジャッジをする線審ができるなんて思ってもみませんでした。今では大きな大会の線審を任されていることが自分でも信じられません(笑)。腕の痛みが悪化してマッサージの道を断念したとき、自分自身の可能性もあきらめてしまっていたら、線審という仕事には絶対に巡り合わなかったでしょう。
今後、海外や国際的な環境に飛び込みたいのなら、自分の趣味を上手に活用すると良いと思います。国や言葉が違っても、同じ興味を持つ者同士なら驚くほど仲良くなれるものです。親しくなればコミュニケーションの機会にも恵まれますし、多彩なお付き合いの中で自分自身の視野も大きく広がり、充実した日々が過ごせるのではないでしょうか。
夢に素直に。世界で活躍するママ線審の姿勢に共感
楽天ジャパンオープンテニスの線審を終えた後に取材に応じてくださった長谷川さん。世界のトップ選手の線審を務める実力派ながら「テニス好きが高じて線審をしていますが試合中はボールの行方を追うのに必死で、ゲームを楽しむ余裕なんてないですよ(笑)」と親しみやすい笑顔で語ります。今後は海外での線審経験を積み、ウィンブルドンやUSオープンなど世界のグランドスラム大会を担当するのが目標だそうです。
主婦としてのライフスタイルを保ちながら無理なくキャリアを積み重ねる長谷川さん。「年齢や忙しさを理由に自分自身の可能性をあきらめてしまうのはもったいない」とそっと背中を押してくれる素敵な女性でした。
【取材協力】
テニス・オーストラリア
花みずき
https://tabelog.com/hyogo/A2803/A280304/28038203/
筆者:林カオリ/ライター・エディター
関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外の実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。
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