国際ビジネスの基本は個人間の文化交流。文字文化の第一人者が実践する世界とつながる交流術

2018.10.16トピックス
Summary あらすじ

世界のあらゆるものがボーダレス化する今、文字や言語、文化の在り方も新しい時代に突入しています。国際性を身に付けるためには、言語の習得だけでなく外国の文化を理解することが必須。日本のフォント業界を背負う株式会社モリサワの森澤武士さんが実践する世界との付き合い方を参考に、海外文化を理解してより柔軟に国際社会に対応する秘訣を探ります。

書籍や雑誌などの印刷物をはじめ、PCや携帯電話、家電機器に搭載されるデジタル文字など、日常のいたるところに文字があふれています。文字文化の発展を語る上で欠かせないのが、株式会社モリサワのフォント技術とイノベーションです。

 

国の垣根を越えて日本の文字文化を世界に伝える第一人者である森澤武士常務取締役に、グローバル時代を背景に世界的に活躍するための最強の交流術についておうかがいしました。

 

Profile

森澤武士さん

株式会社モリサワ常務取締役。1924年に世界初の邦文写真植字機を発明した森澤信夫氏を祖父に持ち、幼い頃から日本文化と海外文化の交流を間近に感じながら育つ。現在は東京、大阪、海外の各拠点を飛び回り、各国のフォント業界との提携関係や共同事業を精力的に推進。私生活では美味しい食事やワインに目がないグルメ通。家族とキャンプや旅行、料理などを楽しむ家庭人・趣味人でもある。

社会のグローバル化に伴い、日本の文字文化も国際力が問われる時代に

 

まず、御社の主な事業と森澤さんご自身の主な仕事内容をお聞かせください。

 

弊社は、書籍や雑誌、新聞などのほか、Webやスマートフォンなどに使用されるフォントの開発をはじめ、ソフトウェアや技術開発など、文字にまつわる業務を手がけています。祖父が写真の原理を利用した世界初の邦文写真植字機を発明してから現在にいたるまで、デジタル化やグローバル化といった時代の変化に合わせたイノベーションを繰り返し、日本の文字文化の発展に尽力してきました。弊社が保有する書体は1,000を超え、アドビシステムズなどの海外パートナーを通じて世界中で使用されています。

 

社内の業務は多岐にわたりますが、私は主に世界に向けた事業を推進しています。

 

 

日本国内だけの事業だと思いがちですが、海外では具体的にどのような活動をしているのでしょうか?

 

「日本語フォント」といえば、国内だけのものと思われるかもしれません。しかし、ここ10年ほどでコンピュータや電話、家電など、あらゆるものがユニバーサルになりました。スマートフォンでもパソコンでも、日本語や英語はもちろん、世界各国の言語を選択できますよね。社会がグローバル化するにつれて、フォント業界も世界の垣根を越えなくてはなりません。

 

私は67年前から1年のうちの3分の1は海外で仕事をしています。海外での私の役割は、世界のさらなるボーダレス化に対応するために各国の同業者と協力関係や提携関係を結んで、日本のみならず世界規模の基盤を強固にすることです。

 

そういった活動のひとつに、私が6年前に立ち上げた「F7」という国際交流会があり、日本、中国、アメリカ、インドなど7カ国の同業者が参加して定期的に情報や意見を交換しています。各国のビジネスモデルはとても参考になりますし、実際の業務提携や共同開発の際にも大いに活用しています。

対人間の付き合いに日本人も外国人もない。自国の文化を大切にし、相手の文化も尊重する

 

世界の同業者をまとめるにはコミュニケーション力が欠かせませんが、森澤さんはどのように信頼を勝ち取っているのでしょうか?

 

国際ビジネスで信頼を勝ち取るといえば大げさに聞こえますが、相手がどこの国の人であろうとも、基本は人間と人間の付き合いです。ささいなことですが、私はちょっとしたギフトを贈るにしてもアシスタントや秘書任せにしません。相手に喜んでもらえそうなもの、相手のイメージに沿うものを必ず自分の目で選びます。例えば、何年もお目にかかれず、クリスマスカードのやり取りだけが続いているような場合も、直筆でメッセージを書いたり、自筆でサインしたりするようにしています。

 

義理の付き合いではなく、相手の喜ぶ顔が見たい。対人間の付き合いに日本人も外国人もありません。相手を敬い、思いやる気持ちが大事です。また、相手が大人であっても子どもであっても、どんなビジネスの規模であっても、相手によって態度を変えることはありません。

 

相手をリスペクトすることの尊さに国境は無いんですね。その他、外国のビジネスパートナーたちと良好な人間関係を築くために心がけていることはありますか?

 

海外での食事では、必ず現地の人が勧めてくれるものを食べるようにしています。それは、その土地の食文化を体験したいから。当然、口に合わないこともありますよ(笑)。でも、先入観で選り好みや拒否はしません。文字と同様に、その土地の食べ物がその土地に根付いているのは、歴史や文化に何らか関連があると思うのです。

 

例を挙げると、お味噌汁は日本と韓国では作り方が異なります。日本ではお湯を沸かして出汁を取ってからお味噌を入れますが、韓国では水の時点でお味噌を入れるそうです。「その作り方、違う!」と拒否してしまいそうですが、韓国式の作り方にはその土地ならではの理由があるはず。「自分と違うから」「知らないから」という理由で、相手の文化を拒絶するのではなく、外国の文化をリスペクトして理解しようとするそういった共存の態度が国際交流には不可欠だと思います。

 

日本が良い、アメリカが良い、といったような国の優劣はそもそもありません。どの国にも良い面がある。他国の良い面やアイデアを謙虚に受け入れて参考にすることが、今後のビジネスに役立ちます。自国の文化を大切にし、相手の文化も尊重すること。それこそが世界との共存共栄の鍵になると信じています。

 

最後に、これから国際的な分野で活躍したいという方にアドバイスをお願いします。

                                                                                                               

海外ビジネスの成功の要素は、契約書に記載された金額や条件だけではありません。個人と個人の信頼関係があってこそ、良好なビジネスが構築されていきます。自分の用件があるときにだけ都合良く連絡を取るのではなく、普段から対人間として相手と接することです。

 

長く良好な関係を築くには、対個人の交流術を磨いてください。最後は個人力がものをいいます。

交流術に支えられた人脈力で国際会議の日本誘致にも成功

 

モリサワのフォントは、印刷業界やメディア業界では知られた存在。森澤さんは、業界屈指の規模と技術を誇る企業の創業者一族ながら、与えられた基盤の上に胡坐をかくのではなく、次々と新しい挑戦を続けています。

 

2019年には、40カ国から400社以上の印刷・出版業者、デザイン会社が集まる世界最大のタイプ業界の国際カンファレンス「AtypI」を東京に誘致し、その実行委員長を務めるそう。

 

「ベルギーのアントワープで開催された2018年の大会では、次回のホスト企業として現地でディナーパーティを開きました。このとき、現地リサーチに奔走してくれたのは、何年もクリスマスカードを送り続けている現地在住の知人です。個人の付き合いを大切にしたからこそ、いざというときに200%のお力添えをいただける。本当に感謝しかありません」と森澤氏。

 

国を越えた人脈力を支える交流の秘訣を少しのぞかせていただいたような気がしました。

 

【取材協力】

株式会社モリサワ

https://www.morisawa.co.jp/

 

筆者:林カオリ/ライター・エディター

関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外の実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。

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