海外で見つけた天職。世界中を飛び回る女性フォトグラファー

2019.03.19旅行・留学
Summary あらすじ

国の垣根を越えてフォトグラファーとして活躍する三國希実子さん。モットーは「好きなときに、好きな場所へ、好きな人に会いに行く」。学生ビザで訪れたオーストラリアに永住し現在のライフスタイルを手に入れるまでには、いくつもの人生のターニングポイントがありました。

「オーストラリアに永住したい」という夢をかなえ、海外生活と自由な働き方を手に入れた三國希実子さん。

 

留学や結婚、出産というライフイベントを通じ、「海外で何をしたいのか」「この先、自分はどう生きたいのか」と自分自身と真摯に向き合った結果、写真の道にたどり着きました。海外生活の中で見つけた“自分も家族も大切にする”ライフスタイルに迫ります。

 

Profile

三國希実子さん(Kimiko Mikuni

シドニーを拠点にロンドン、パリ、シンガポール、東京など世界各地で活躍するブランドスタイリスト(フォトグラファー)。写真を通じて被写体の本質や魅力を表現する独自のビジュアルブランディングに定評があり、コーチ、講師、セラピスト、スタイリストなどの個人起業家から大きな支持を得ている。プライベートでは妻であり一児の母。家族と協力しながら仕事で海外を飛び回る自由なライフスタイルが注目されている。

初めてのオーストラリアは高2の夏。ホストマザーの生き方に触れて移住を決意

 

現在、フォトグラファーとしてどのようなお仕事をされているのでしょうか?

 

起業家のビジュアルコンセプトの一環として、広告やウェブサイトで活用する人物撮影を主に行っています。コンセプト設計やイメージ戦略など根幹のプロデュース部分と写真の撮影を私が担当し、グラフィックデザイナーやウェブデザイナー、パーソナルスタイリストとチームを組んで仕事をしています。

 

ただ美しい写真を撮るだけでなく被写体の本質や内面を引き出すことを重視しているので、ブランドスタイリストと名乗ることも多いですね。クライアントは講師や専門家など自らがビジネスアイコンとなって事業をしている起業家の方が大半です。うれしいことにオーストラリアだけでなく海外からも多数のご依頼をいただいています。

 

オーストラリアへは初めは学生ビザで渡豪されたと聞きました。渡豪前から写真を専門にされていたのでしょうか?

 

初めてのオーストラリアは高校2年生の夏休みでした。ある企業の10日間のホームステイプログラムでクイーンズランド州の小さな田舎町アローラに滞在したんです。そのときのホストマザーが素晴らしい人で、いろいろな面で大きな影響を受けました。思えばそのときから海外移住に憧れていたのかもしれません。

 

日本の大学を卒業してからは商社勤めで写真とは縁遠い生活を過ごしていたのですが、就職して3年目ぐらいのときに「私、このままでいいのかな」と自分自身を見つめ直す時期があって。そのとき、少し前に会いに行ったオーストラリアのホストマザーを思い出しました。3人の子どもを持つシングルマザーでありながら、私のホームステイもボランティアで受け入れてくれた心の広い人。そのホストマザーに「老後の不安とかはないの?」と聞くと「そんなの全然ないわよ」と笑うのです。贅沢はしていなかったけど、いつも幸せそうで愛情にあふれたホストマザーの姿に高校生の頃とはまた違った衝撃を受けました。「そんなふうに幸せに暮らせるオーストラリアってなんなのだろう……」と。

 

思い立てば行動は早かったです。2002年に学生ビザでシドニーのデザインカレッジに留学し、ディプロマコースで学ぶことにしました。

 

グラフィックデザインを専攻された理由は何でしょう?

 

渡豪当時からゆくゆくはオーストラリアに移住するつもりだったので、永住権を取得しやすい技術を身に付けたいという思いがありました。当時の移民法ではグラフィックデザイナーは永住ビザを取得しやすい職種だったのです。ただ、移民法は頻繁に改正されますから、コースが終わる頃にはデザイナーは永住権の対象職種から外れてしまっていて。

 

でも、まだ日本に帰国するつもりはなかったので、ワーキングホリデービザを取得してパートタイムで働きながら移住の道を模索しました。そんなとき、私と同じようにオーストラリアに魅了された夫と職場で知り合い結婚。夫婦で協力し合って永住の夢をかなえました。

疲弊していた人生を前向きに動かしてくれた写真との出会い

 

結婚されてからはどのようなお仕事をされていたのですか?

 

結婚後は現地企業のインハウスデザイナーとして数年働き、出産後はフリーランスとしてグラフィックデザインやインテリア関係の仕事をしていました。当時から仕事でちょっとした写真は撮っていましたが、本格的に写真を始めたのは現地企業を退職して子どもが生まれた後ですね。

 

写真にたどり着くまでには紆余曲折がありました。息子が6歳のときに日本に4ヶ月ほど帰国したことがあったのですが、生活環境が大きく変化したせいか鬱気味になってしまって。心身ともに疲れ果てた私は、夫と話し合って1年間休業して家事に専念しました。料理はあまり得意じゃなかったのですが、苦手な家事も全部まじめにやってみました。

 

休業前の私は「何かしなきゃ」「働かなきゃ」「頑張らなきゃ」という思いにとらわれすぎていたのかもしれません。いざ生活を変えてみると、主人も子どもも私もその状況に合わせた心地良いライフスタイルへと自然に変わっていったのです。そういった生活の変化を前向きに感じさせてくれたのが写真でした。

 

休業されていた時期に写真と出会ったのですね。

 

心が沈んでいた頃、私の感覚からは色が失われていました。ある日、夫が気分転換にと外に連れ出してくれたときのことです。突然、透き通るような青空や鮮やかな木々の緑が洪水のように目に飛び込んできました。気づけは夢中でカメラのシャッターを押していて。どうしてもその感動を周囲に伝えたくなって、撮った写真をブログに載せて自らの思いをアウトプットし始めました。写真を通して自らを表現することで、徐々に自分らしさを取り戻していったんです。

 

それからは、東京で行われたブルガリア人写真家のセミナーに参加したり、友人のプロフィール写真を撮らせてもらったり、次から次へと写真につながるお仕事やイベントが舞い込んできました。写真を始めたら世界が目まぐるしく動き始めたのです。写真にまつわる仕事や縁が驚くほど次々とつながって、写真を撮る方向に人生が向かっているのだと強く感じました。

 

例えばどんなことがあったのでしょう?

 

オーストラリアで有名なMr. Jason Grantという憧れのインテリアスタイリストがいるのですが、ある日、写真の練習のためにシドニーのボンダイビーチに行ったら、その憧れの人がビーチで愛犬と散歩をしていたのです。勇気を振り絞って話しかけ、一眼レフで2枚ほど愛犬との写真を撮らせてもらいました。

 

後日、写真を本人にお送りすると、ご自身のブログで紹介してくれたうえで「雑誌で自分の特集が組まれるので撮影してくれた写真を使っていいかい?」と連絡をくださって……。写真を本格的に始めてまだ3ヶ月頃のことです。著名な雑誌のページに自分の写真が掲載されると知り、「ちゃんとフォトグラファーしなくちゃ!」と襟を正したのを覚えています。

家族で協力しながら好きなように生きる

 

現在はいろんな国で撮影のお仕事を受けておられますが、シドニーを拠点にするメリットはどんなところでしょうか。

 

シドニーはとても流動的な街です。世界中からたくさんの移民や留学生が集まり、また自分の国に帰ったり別の国へと移ったり。オーストラリアに暮らしてもう17年になりますが、その間に仕事やプライベートで知り合った人たちは今や世界各国に散らばっています。シドニーで仕事を続けると自然と世界各国の人たちとつながれる。それが今の私の仕事のベースになっていると思います。私の仕事のモットーは「好きなときに、好きな場所へ、好きな人に会いに行く」ことですから。

 

家庭と仕事のワークライフバランスはどのように考えていますか?

 

「夫だから妻だから子どもだから、絶対こうでなくてはならない」というルールは我が家にはありません。みんな自分のやりたいことをする代わりに家族への協力も惜しまないのが我が家流。夫も私も互いのやりたいことにはNOとは言いませんね。子どもも含め、家族全員で家事をしますし、それぞれが独立した人間として尊重し合っています。

 

もちろん子どもの学校行事などは最優先ですよ。家族として外せない大切な用事を考慮しながら自分の好きなように生きているのです。家を空けることも多いですが、私が楽しそうに写真を撮っているのが夫も嬉しいみたいです。「また妻が海外に行っちゃったよ」と話のネタにされています(笑)。

 

とても充実した生活を送っておられますが、海外で夢を実現する秘訣は何でしょうか?

 

まずは英語ですね。英語って自分の思いをはっきりと伝えなくてはならない言語だと思うのです。日本語では状況や理由を説明してから結果を述べますよね。「こうこういった理由があって、そのため本件はいかんともしがたく……」という感じで。一方、英語では自分の意見や希望から話が始まるのでお茶を濁すような発言では通じません。なので、英語を学ぶと自然に英語的な考え方をするようになり、自分の意見や希望も明確になります。これが自分の軸で生きるためのヒントにもつながります。

 

そして、もう一つオーストラリアで学んだことは、自分のやりたいことがあるならちゃんと言葉に出してアクションを起こすべきということ。オーストラリアでは希望や夢を言葉や態度に出すと必要なサポートをしてもらえたり、チャンスをもらえたりします。思いはきちんと伝えないといけませんね。

「好きなときに、好きな場所へ、好きな人に会いに行く」

 

小学生の頃から英語好きで大学は外語大学に進学した希実子さん。

 

「でも、つい最近まで英語での会話に自信が持てませんでした。自信を持ってコミュニケーションできるようになったのは、写真を軸にしたことで自分自身に自信が持てるようになってから」と笑います。今後は自分のライフワークである人物撮影やブランディングの仕事の幅を広げながら、ダンスやカリグラフィー、薬膳酒づくりなど新しい趣味にも挑戦してみたいそうです。

 

希実子さんの前では誰もが自然とありのままの顔を出す。人の素顔と幸せを引き出すフォトグラファーの希実子さんは、今日も「好きなときに、好きな場所へ、好きな人に会いに行く」のです。

 

【取材協力】

Joidea

https://www.joidea.com.au/

 

photo: ©Wendy K Yalom

 

筆者:林カオリ/ライター・エディター

関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外での実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。

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人気料理講師
ポーランド・クラクフ
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