英国の伝統工芸シュガークラフトに魅せられて。留学経験が人生を変える。

大阪でシュガークラフト教室「サローネ・ドルチェ」を主宰する中村美和さん。会社員時代にシュガークラフトの繊細な美しさに魅せられ、留学を決意しました。留学の目的が明確なら、英語が苦手でも何とかなると中村さんは言います。留学を考える人に伝えたいアドバイスとは?
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目次
Introduction
結婚式などで可愛らしいシュガークラフトのウェディングケーキを見たことはありませんか?シュガークラフトとは、17世紀のイギリス、ヴィクトリア女王時代に生まれたお菓子作りの技術で、砂糖で作られた美しいデコレーションです。イギリスでは、結婚式や誕生日、イースターなど、お祝いでしばしば登場します。
会社員時代にシュガークラフトに魅了された中村美和さんは、本格的な技術を学ぶために、シュガークラフトが盛んな米国と英国へ留学。国内外のコンテストで数々の受賞歴を誇る実力者です。大阪で開催するシュガークラフト教室では、会社勤めの女性や主婦はもちろん、プロのパティシエも通います。そんな中村さんに、シュガークラフトの魅力と留学時代の体験、留学を目指す人へのアドバイスをうかがいました。
【Profile】
中村美和さん
会社員時代にシュガークラフトに出会い、米国の「ウイルトンスクール」に短期留学してマスターコースを、英国の名門「ブルックランズカレッジ」に1年半留学して数種類の英国職業資格を習得。帰国後、1997年よりシュガークラフト教室「サローネ・ドルチェ」を主宰。英国の「CREATIVE WORLD OF SUGAR」大会最高賞BEST IN SHOW受賞(2004年)、「8th INTERNATIONAL EXHIBITION」マスタークラス金賞受賞(2016年)など、国内外のコンテストで数々受賞し、日本シュガーアート協会常務理事も務める。
シュガークラフトの虜になり、留学に踏み切る

―― シュガークラフトとの出会いについて教えてください。どんなところに魅力を感じたのでしょうか?
小さいころからお菓子作りが大好きだったのですが、会社員時代にお菓子作り教室に通い始め、そこでシュガークラフトを知りました。デコレーションの繊細な美しさに魅了されましたね。しかも、砂糖をメインに、すべて食品でできていることにも驚きました。
―― 教室に置かれている作品の数々は、レースやカメオ細工、生花のようですね。シュガークラフトを趣味の範囲にとどめず、留学にまで踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?
会社員時代は、営業事務をしながら一生続けられる仕事を探していました。そのため、フラワーアレンジやディスプレイなど、興味のある習い事もいろいろと挑戦したのですが、あまり続かず……。その中でシュガークラフトは、自分の好きなことが詰め込まれていたせいか珍しく続けることができた習い事だったんです。
2年ほど教室へ通っているうちにシュガークラフトの本場で勉強をしたくなり、有給休暇を使ってアメリカで2週間の短期研修に参加。さらにイギリスへ1週間、飛び込みで勉強しました。けれども、実際に現地で学んでわかったのは、短期間ではダメだということ。シュガークラフトは、日本の和菓子のように伝統的で奥深いと改めて実感させられたからです。
当時、本格的に現地で勉強した人が日本にほとんどいなかったので、長期留学も念頭にありましたが、短期留学によって「仕事として続けるには本場で腰を据えて技術を取得しなければ」と痛感し、お金を貯めて1年間は勉強に専念しようと決心しました。
留学の目的が明確なら、英語が苦手でも何とかなる!

―― 留学に備え、英語はどのように勉強をしましたか?
カレッジ入学には英語力判定テストのスコアも必要なのですが、英語は全くできませんでした(笑)。そのため、日本の英語学校で勉強し、渡英後も専門学校へ入学する前に、イギリス郊外のブリストルという町で3か月、語学学校で学びました。ロンドンと比べて費用が安く済みましたし、のどかで町の人も優しいので、英語が苦手な人は郊外の方が良いかもしれませんね。
現地では、多少間違った英語を使っていても、よく話す人のほうがいつの間にか英会話が上達していたため、私も恥ずかしい気持ちを捨てて積極的に英語を話すように心がけました。
もちろん、英語が得意であればあるほど現地で過ごしやすいですが、私のように学びたい目的が明確で、その知識が日本語で備わっていれば、英語が苦手でもなんとかなるものです。目的が興味のあることだからこそ、英語で調べるのも楽しかったですよ。
留学経験を経て、今ではシュガークラフトが「一生の仕事」に

―― 留学中に困ったことはありませんでしたか?
ホームシックになりましたね。イギリスの学校が始まるのは9月からですが、イギリスの冬はとにかく寒いし暗い。朝の8時くらいまで太陽は昇りませんし、16時ごろには日が沈むんです。だから、通学は行きも帰りも真っ暗で、気分まで沈みました。
―― ホームシック対策はどうしたのでしょう?
落ち込んだときには、よく日本の音楽を聞いていましたね。食も合わずに自炊をしましたが、日本にいるときから料理をしておけば良かったと後悔しました(笑)。料理上手な人たちは、サーモンをさばいて塩漬けにしてシャケおにぎりにしたり、小麦粉とバターと豆でどら焼きを作ったり、代用の材料で上手に日本の味を再現していたようですから。私のように、高くてあまりおいしくないラーメン屋さんに行かなくていい(笑)。
それから、日本人の知り合いがいたので、たまに彼らと情報交換するようにしていました。年齢が違ったため、頻繁に一緒に遊ぶほどの間柄ではありませんでしたが、特にホームシックになったときなどにはとても心強かったです。遠く離れた異国の地では、同じ日本人というだけで親近感を持てるものですよね。
―― 最後にこれから留学をしたい人へアドバイスをお願いいします。
私の場合、留学の目的がはっきりとしていたことが良かったと思います。留学期間も決めていたので、昼間に授業を受けた後に夜21時までシュガークラフトを作り、宿泊先に戻ってからレポートを仕上げる、といったハードな日々を乗り越えることができました。
それから、自分で働いて貯めたお金を思い切って使って留学したこともあって「何が何でもシュガークラフトの技術を身につけて帰るんだ!」という意識を高く保てたように思いますが、とはいえ、困ったときはひとりきりで悩まず、現地の日本人はもちろん、学校の先生や親にも頼ると良いですよ。
イギリスでは、寒くて暗い冬を終え、やがて春になれば、花が咲き始めて華やいできます。日出から日没の時間もどんどん長くなって、次第に気分も明るくなりました。留学して入学した当初は辛いこともありましたが、春からはどんどん元気になり、もっと資格を取得したくなって留学を半年間延長することに。
帰国後には教室を開き、会社員時代に出会ったシュガークラフトが今では「一生の仕事」になっています。
イギリスやアメリカで、本場のシュガークラフトを鑑賞しませんか?

普通の会社員から一生の仕事を見つけ、留学で技術を身につけた中村さん。彼女の言葉には、これから留学を考えている人や、何かを始めたいと思っている人に参考にしてほしいヒントがあるように感じました。
そして、イギリスやアメリカへの旅行を予定している人は、本場のシュガークラフトの素晴らしさにも触れてみてください。ケーキ屋さんだけではなく、イギリスなら「ハロッズ」や「フォートナム&メイソン」といった老舗高級百貨店の食料品売場に、豪華なものが置かれているのだとか。大きなスーパーでは、お手頃価格のシュガークラフトほか、日本ではなかなか手に入らない材料も売っていておすすめだそうです。
中村美和さん、ありがとうございました!
【取材協力】
サローネ・ドルチェ
http://www.sugar-craft.net
筆者:児島奈美/トラベルライター
旅行雑誌やWEB等で、国内外問わず現地へ足を運び取材・撮影を行う。得意分野は、旅のルポ、グルメ取材、人物インタビューで、渡航した海外はプライベートを含め約40か国。雑誌立ち上げのために約3か月、ベトナムに滞在したほか、欧州周遊(約3か月)、米国横断(約1か月)、東南アジア周遊(約3週間)、英国縦断(約3週間)、米国滞在(約1年)の経験も持つ。実践の場で英語を使うことが多く、「英語はツール」をモットーに、わかりやすく使える英語を心掛けている。
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