デザインに国境はない!日豪をつなぐ日本人デザイナーの奮闘

2019.02.19旅行・留学
Summary あらすじ

在豪の日系企業から厚い信頼を寄せられる日本人グラフィックデザイナーの麻野高宏さん。シドニーでデザイナーとして認められるまでの道のりや現在の仕事ぶり、活動拠点を海外に移した理由などについてインタビューしました。海外で支持される秘訣に迫ります。

「暮らしたい場所はあるけれども仕事がない」「やりたい仕事はあるけどその場所で働きたくない」など、住みたい場所とやりたい仕事は必ずしも合致しません。

 

海外でグラフィックデザイナーとして活躍する麻野さんは、海外で暮らす夢とグラフィックデザイナーとして働く希望を同時に実現しています。それは、ただ機会に恵まれたからではなく、自ら道を切り開いてつかみ取った理想のライフスタイルでした。

 

Profile

麻野高宏(Takahiro Asano)さん

オーストラリアでデザイン会社「SPEC Design Group(スペックデザイングループ)」を主宰するグラフィックデザイナー。在豪日本人デザイナーの草分けとして日系企業を中心に広告・冊子等の印刷物やウェブデザインを広く手掛る。2010年にはグラフィックやITのデザインスクールを開講し、デザインを通してオーストラリアと日本の架け橋になるべく精力的に活動。プライベートではオーストラリアの人気モデルとして活躍する8歳の息子のサポートにも奮闘する。

大きな仕事をダイレクトに任されるのは海外ならではの醍醐味

 

― 現在、シドニーで経営されているデザイン会社の仕事内容についてお聞かせください。

 

日本人経営のデザイン会社として1999年に会社を設立してから、オーストラリアに支店や海外本社・支社を持つ日系大手企業の広告やパンフレット、チラシ、ウェブなどのデザインを数多く手がけています。私自身が日本人なので、やはり日系企業からの依頼が多いですが、オーストラリアのローカル企業や政府関係からの仕事もしていますよ。現在までにデザインをご依頼いただいた企業は約450社に上っています。

 

海外で日本人デザイナーとして活躍されていますが、日本とオーストラリアで仕事の違いはありますか?

 

デザインのみに関していえば、国による違いはそれほどないと思います。「視覚情報をどのように伝えるか」というのがグラフィックデザイン。私の場合は、どのようにして見る人にインパクトを与えるか、また、印象的だと感じてもらえるかという点を重視しています。こういった根本的な姿勢はどこで仕事をしても変わりません。そういう意味ではデザインという仕事には国境がないのかもしれませんね。

 

会社経営となると外国人ならではの苦労があるのではないでしょうか?

 

仕事を獲得するためのプレゼンテーションやコンペなどではネイティブの語学力にはかないません。特に会社を立ち上げたばかりの頃は言葉のプレッシャーが大きかったですね。自分の英語力をカバーするために初めての打ち合わせから詳細なラフデザインを用意したりして事前準備にかなり時間を費やしました。でも、ひとつひとつ丁寧に仕事をしていると徐々に口コミで評判が広がり、日系企業だけでなくローカル企業からもたくさん声をかけていただけるようになりました。

 

シドニーで活動していると、現地の日本人コミュニティで日系の大企業のトップの方と知り合いになり大規模な仕事をダイレクトに任せてもらえることもあります。日本では何重もの段階を踏まなくてはならないような大きな仕事をポンと任せてもらえるのは、海外で活動するメリットのひとつかもしれません。

人生観に影響を与えた初めての海外旅行。会社を辞めてシドニー留学を決行

 

活動拠点を日本から海外に移した理由はそんなメリットを見込んでいたのでしょうか?

 

いえいえ。ただ海外に暮らしたいという単純な憧れからシドニー生活が始まったのです(笑)初めての海外旅行は21歳のとき、行き先はニューカレドニアでした。当時、日本のデザイン会社で昼夜の区別なく働いていた私は、初めて見る海外リゾートの優雅な時の流れや現地で知り合った日本人の豊かなライフスタイルに大きな影響を受けたのです。旅行から帰ってすぐにフランス大使館に電話して「フランス領のニューカレドニアに住みたいのですが」といきなり問い合わせたこともありました。

 

海外で暮らしたいという思いが日増しに強くなり、1993年についに日本の仕事を辞めて留学を決意。シドニー郊外に暮らしていた叔父の家から語学学校に通いました。その後、学生ビザで学校に通いながらツアーガイドとして働いていましたが、デザインで生きていきたいという思いは持ち続けていました。自分の希望を叶えるチャンスが訪れたのは1999年。当時お世話になっていたガイド会社の協力を得て、現在の「SPEC Design Group」の前身となるデザイン会社「Studio SPEC」を立ち上げることになりました。

 

海外生活への憧れがきっかけで渡豪されたということですが、オーストラリアの良い点・悪い点はどういったところで感じられますか?

 

私は几帳面な性格で細かいことが気になるタイプだったので、初めはオーストラリア人のおおらかというか大雑把な側面が気になることもありました。今ではもう慣れましたけどね(笑)

 

良い点としてはオーストラリアの国民性でしょうか。他人の趣味や主義、文化、考え方などを尊重するフェアな精神は本当に素晴らしい。個人的なことに他人がうるさく口を出すようなことはありません。そんな個を尊重する姿勢が寛大な国民性につながっているのでしょう。あと、オーストラリアに暮らす人はとても子どもに優しいです。社会全体に温かく見守られながら育った子どもたちは思いやりのある大人に育ちます。斬新なファッションに身を包んだ今どきのティーンエイジャーが電車でお年寄りに当然のように席を譲っている姿を見ると微笑ましく感じますね。

息子は人気モデル。息子の仕事を通して子どもに優しい国を実感

 

子どもといえば、麻野さんの息子さんはシドニーで人気のモデルさんとお聞きしています。

 

街でスカウトされたのがきっかけで4歳から子どもモデルをしています。オーストラリアの高級百貨店David Jonesやカンタス航空など多くの企業の広告やCMに出演しています。羽田空港にもカンタス航空の仕事で撮影した大きな広告が設置されているようです。

 

私が息子をオーディションや撮影の現場に連れて行くこともよくあります。モデルの仕事に立ち会って驚いたのですが、子どもが仕事をする現場としてふさわしいかどうか国の担当者が撮影現場にチェックしに来るのです。無理やりモデルの仕事をさせられていないか、子どもの意思や権利が尊重されているかを確認するためです。モデルであろうが俳優であろうが、子どもの保護に対する国の徹底した姿勢に例外はないですね。

 

オーストラリアが子どもに優しい国というのは本当なのですね。会社経営に息子さんのサポートにと奮闘される麻野さんですが、海外生活で夢をかなえるコツは何でしょうか?

 

自分のやりたいことや生かしたい特技があるのなら、その気持ちをあきらめずに持ち続けることです。そして、その夢や希望をきちんと他人にアピールすること。また、やりたいことがあるなら躊躇せずにすぐに行動することも大切だと思います。英語力でもデザインでも学びと経験を経てこそ身に付いていくものですからね。

楽しむ×挑戦する。前向きな遊び心が海外で支持される秘訣

 

シドニーの日系デザイナーとして人気の麻野さんは、若いデザイナーの育成にも積極的に励んでいます。グラフィックデザイナーやウェブデザイナーを養成するスクールを開講したり、オーストラリアと日本をつなぐIT交流会のJAITJapan Australia IT)に参加したりするなど、次々と活動の場を広げています。現在は日本人留学生が短期でデザインやITを学べるような合宿制講座を企画中だそう。

 

移り変わりの早いデザインやITの世界でニーズに応え続ける麻野さん。いつまでも楽しみながら挑戦し続ける前向きな遊び心が海外で長く支持される秘訣なのかもしれません。

 

【取材協力】

SPEC Design Group

https://www.studiospec.com.au/

 

筆者:林カオリ/ライター・エディター

関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外の実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。

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