海外駐在員から起業家へ。アジアを拠点にキャリアを切り拓く

2019.01.22旅行・留学
男性
Summary あらすじ

大手企業の海外駐在員から海外起業家へ。経済大国へと変貌する中国の躍進を目の当たりにした奥田幸三さんが辿ったキャリア形成の道のりに迫ります。そこには、海外就職や起業を成功に導くヒントがありました。

大手企業の海外駐在員を辞して決行した語学留学、大学院でのMBA取得、香港での起業など、自らの意志と情熱でキャリアを切り拓いてきた奥田幸三さん。

 

今回は、ブラジリアン柔術で鍛えた強い精神力を背景に活躍し続ける奥田さんに、海外でキャリアを形成していく際に大切なことについてうかがいました。

 

 

Profile

奥田幸三さん(Kozo Okuda

Design Works Lab Limited(香港)、365Days Limited(香港)代表。大学卒業後に株式会社セガの海外駐在員として北京勤務した後、パーク24株式会社、株式会社タイトーなどの大手企業のアジア市場で活躍。ニュージーランド留学や大学院でのMBA取得を経て、現在は香港をベースとした貿易会社とデザイン会社の2社を経営する。中国で出会ったブラジリアン柔術で日々身心を鍛えながら、さらなる競技の発展を目指して大会の協賛企業としても貢献している。

モダンなニューヨークとは正反対。高度成長前夜の中国へ

DESIGNWORKSLAB

 

現在は香港や中国などで活躍されていますが、アジアを主軸にされたきっかけを教えてください。

 

大学卒業後に大手ゲームメーカーのセガに就職し、26歳のときに駐在員として上海に赴任しました。駐在員を選ぶ面接では「中国に赴任できなかったら会社を辞めて中国に行く」と上司に熱意を伝えました。当時4,000名以上いたセガの社員の中で海外駐在は20名のみ。本当によく選んでもらえたと思います。

 

実は大学時代は中国ではなくアメリカ、特にニューヨークに興味があって。念願かなってニューヨークに旅行したときには映画『ブレードランナー』さながらのモダンさに興奮しました。その後、大学の卒業論文の調査のために単身で中国に飛んだのですが、当時受けた衝撃はニューヨークとは正反対のものでした。まるで時代をさかのぼったような中国という国にショックを受けたのです。ニューヨークと中国の大きなギャップが頭から離れず、いつからか「中国で働きたい」と私の心は中国の方に振れていました。

 

中国ではどのような環境で働いていたのですか?             

 

セガの中国本社には200名ほどのローカル社員が働いており、そのうち日本人は社長と私の2人だけ。北京語もあまり話せず知り合いもほとんどいなかったので、すごく寂しかったのを覚えています。現地のスタッフとコミュニケーションをとるために、仕事をしながら北京語の語学学校へも通いました。

 

私は課長のポジションで勤務していたのですが、書類を見ながら何げなくつぶやいた「アホか」という言葉をローカル社員に聞かれてしまい、中国人への侮辱だと社員全員に無視されたことも。社員に手紙で真意を説明して誤解を解くことができたのですが、若かった私には相当応えましたね。

アジアのビジネスでも英語は必須。大企業を辞してNZへ語学留学に

香港

 

英語の語学留学のために大手企業を辞める決心をされたのはなぜですか?

 

中国のセガは中国文化部との合弁会社だったため旧人民解放軍のOBなども役員にいたりして、文化の面でも仕事の面でも毎日が驚きと刺激の連続でした。2年の赴任を終えて日本に帰って来たとき、平穏すぎる毎日をつまらなく感じてしまったのです。

 

また、英語圏だけでなくアジア諸国のビジネスでも英語を使う必要性を感じていました中国の知識層はABC(アメリカン ボーン チャイニーズ)も多く、みな英語を流ちょうに話します。赴任を終えてある程度の中国語は話せるようになっていましたが、中国の知識層と互角に仕事をするには英語を身に付けなくては太刀打ちできないと痛感していました。

 

そこで思いきって会社を辞めてニュージーランドに語学留学したのです。高校のときからラグビーをしていたためラグビー大国を見てみたい気持ちもあり、留学に迷いはありませんでした。旅の終わりに立ち寄ったフィジーの砂漠の町では世界一周旅行途中の欧米人に出会い、社会の枠に縛られない自由な生き方に羨望を抱きましたね。もう一度、海外で働きたいという思いが日増しに強くなりました。

 

その思いが叶って、また中国で仕事を任されたのですね。

 

ゲームメーカーのタイトーに声をかけてもらい、現地法人の代表として2005年~2013年に北京に赴任しました。ちょうど北京オリンピックなどもあり、中国が日に日に発展していたころです。世界第2位の経済大国へと向かう中国は、大学生のときに初めて目にした中国とはもう別の国でした。毎日が刺激にあふれた生活でしたが、2012年のCITIC(中国の国家投資部門)との合弁契約の終了に伴い、中国からの撤退が決まりました。中国事業のさらなる可能性を信じていた私は会社の決定に心底がっかりしてしまって。「自分が決定権を持つには自分で会社を立ち上げるしかない」と独立の意思が固まったのです。

 

現在は健康・医療に関わる貿易会社を経営されています。この業種を選ばれたのはなぜでしょうか。

 

健康や医療は北京時代から興味がありました。ラグビーや北京で出会ったブラジリアン柔術の世界では、健康で強靭な身体づくりや怪我の克服はとても身近なテーマです。また、医療や健康は高齢化が進む日本やその他の国でもより重要な分野になると思いました。

 

そこで2014年に日本のドクターと共同で水素治療専門の一般社団法人を立ち上げ、商品開発やサービスに取り組みました。大学院大学でMBAを取得したのもこの頃で、本当に寝る暇もないぐらい忙しかったですね。2016年には医療的根拠のある健康商材のみを取り扱う貿易会社を香港に設立。デンマーク産の麻原料を使用して久留米大学の先生と共同で作り上げたCBD商品など、健康と美容をテーマとした商品開発にも取り組んでいます。

言葉と文化、商習慣の3つの壁を乗り越えて。ブラジリアン柔術にも貢献

集合写真

 

お仕事だけでなくブラジリアン柔術でも活躍されているそうですね。

 

ブラジリアン柔術は日本の柔道を元にブラジルで生まれた格闘技です。ラグビーのような集団スポーツではなくブラジリアン柔術は個人戦。試合中は一瞬たりとも気を抜けず、張り詰めた空気の中で駆け引きを行います。身体だけでなく精神的にもぐんぐん自分を追い込む緊張感がたまりません。2010年から北京でブラジリアン柔術を始めて一時は競技から遠ざかったこともありますが、アジア大会で3位、西日本マスターや東日本柔術選手権でも優勝するなどしました。あと、医療や健康商品を選手に提供するスポンサーとして、ブラジリアン柔術の大会にも貢献しています。

 

香港では「ATOS」というブラジリアン柔術のチームに所属しています。先生はブラジル人でメンバーの67割は欧米人。日本人は私一人です。香港は人口約700万人のうち4割が欧米人ですから柔術のジムも自ずと国際的に。欧米人の仲間と話すときは英語で、ローカルの香港の人と話すときは英語だったり北京語だったり。香港は広東語を話す地域ですが、若い人はみんな英語と北京語も話します。でも、ビジネスでは主に英語ですね。

 

―― 充実した香港ライフを送っておられますね。最後に、海外就職や起業を検討している方へアドバイスをいただけますか?

 

海外で仕事をすると留学とはまた別の側面が見えてきます。言葉の壁は語学を学ぶことで越えられますが、海外でビジネスを成功させるには文化や商習慣の壁を越えなくてはなりません。現地スタッフとの摩擦から誤解を生んで辛い思いをするなどの難しいこともたくさんありますが、言葉と文化、商習慣の3つの壁を乗り越えて良好な関係を築き上げると、その人脈は自分の一生の宝になります。現在の私のビジネスを支えてくれているのは駐在員時代に部下として活躍してくれていた人たちです。中国での販路や手続きの相談などはすべて彼らが力になってくれています。

 

また、起業をすれば今まで守ってくれていた会社の看板がなくなり、すべては自分の責任でビジネスが展開されます。信頼できる人や仕事などを正しく選択するには慎重さも大切です。選択眼を磨くためにも語学や文化、商習慣などの課題にきちんと向き合って、自分の実力や経験を深められると良いですね。

キャリア形成は真摯な努力があってこそ。バイタリティが活躍を支える

メダルを持つ人

 

大学卒業から25年以上、一貫してアジアで走り続ける奥田さん。中国経済の波に乗るだけでなく、北京語や英語の習得、さらには大学院大学でのMBA取得など真摯な努力を重ねて現在のキャリアを形成しました。

 

数ある赴任先から中国を選んだとき、大手企業を辞めて留学したとき、企業の現地代表を辞して独立の意思を固めたとき……多くの心配の声を受けながらも自ら道を切り拓いてきました。困難に立ち向かう真摯な努力とバイタリティが現在の活躍を支えているのに違いありません。

 

【取材協力】

八尾ブラジリアン柔術

http://yaobjj.com/

 

筆者:林カオリ/ライター・エディター

関西を拠点に活躍するライター・エディター(クリエイティブオフィスCOUJIN代表)。知的財産管理技能士。日本にてコピーライター、編集者、ライターを経験した後、15年間オーストラリアに在住。シドニーでは日豪両国の各種媒体に執筆を行う傍ら、2児の海外出産と子育てを経験する。海外の実体験に基づくライフスタイル、旅行、教育、留学関連記事が得意。

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